新規事業のプロジェクトは、不確実が高いなものです。だからできるだけ複数のプロジェクトを平行して管理しつつ、出てきた少ないチャンスは絶対逃したくない!と思っている管理者の方も多いのではないでしょうか。

でも、実際には難易度はかなり高いですよね。

では今回は、複数の新規事業プロジェクトを“一目で”把握する方法、そしてプロジェクトの変化に素早く気づく方法など、新規事業を一目で把握できるようになるとマネージャーの仕事はどう変わるのか考えてみましょう。


まず、複数の新規事業を同時に抱えるマネージャーが直面する「全体が見えない」という課題に焦点を当て、その原因と影響を分析し、「一目で把握できる」状態がマネージャーの仕事にどのような変化をもたらし、チーム全体のパフォーマンス向上にどう貢献するかを考察します。

重要な情報を同じ軸で整理し可視化することで、新規事業マネージャーが本来集中すべき仕事、つまりチームの支援と環境整備に焦点を当てるべきであることを提案します。


1. 新規事業マネージャーが陥る「全体が見えない」3つの構造的要因

新規事業マネージャーが「全体が見えていない」と感じる背景には、構造的な難しさがあります。複数案件を同時並行で抱えるため、各プロジェクトの進捗や課題を詳細に把握することが困難になります。


複数案件を同時に抱える構造的な難しさ

新規事業は、それぞれ異なる段階にあり、異なる課題を抱えています。マネージャーは、これらの案件すべてを同時に管理し、適切な判断を下す必要があります。しかし、時間とリソースは限られており、すべての案件に十分な注意を払うことは現実的に困難です。


情報が人・資料・会議に分散している現状

各プロジェクトの情報は、担当者、資料、会議など、さまざまな場所に分散しています。マネージャーは、これらの情報を収集し、整理し、分析する必要がありますが、これは時間と労力を要する作業です。また、情報が分散しているため、全体像を把握することが難しくなります。


「把握しているつもり」と「説明できる状態」の違い

マネージャーは、各プロジェクトの概要を「把握しているつもり」でも、それを明確に「説明できる状態」にあるとは限りません。これは、情報が断片的であったり、整理されていなかったりすることが原因です。説明できない状態では、適切な判断を下すことが難しく、チームメンバーへの指示も不明確になる可能性があります。


2. 個別把握だけでは不十分?「情報の断片化」が招くマネジメントの限界

各プロジェクトの個別の状況は把握していても、全体像がつかめないという問題は、新規事業マネージャーにとって深刻な課題です。


各プロジェクト担当からの断片的な報告

マネージャーは、各プロジェクト担当から個別の報告を受けますが、これらの報告は断片的であり、全体像を把握するには不十分です。各担当者は、自分の担当範囲に焦点を当てて報告するため、他のプロジェクトとの関連性や全体的な進捗状況が見えにくくなります。


Excel/PowerPoint/口頭報告の限界

Excel、PowerPoint、口頭報告などの従来の方法では、情報を整理し、共有することが困難です。これらのツールは、個別の情報を伝えるには適していますが、複数のプロジェクトの情報を比較したり、全体像を把握したりするには限界があります。


マネージャーが“翻訳者”になってしまう状況

マネージャーは、各プロジェクト担当からの報告を理解し、整理し、他の関係者に伝えるための“翻訳者”のような役割を担うことになります。これは、マネージャーの負担を増やすだけでなく、情報の伝達ミスや解釈の誤りを生む可能性もあります。


3. 全体像の喪失がチームに与える悪影響:判断の遅れと現場の停滞

この”各プロジェクトの個別の状況は把握していても、全体像がつかめない”という状態は、マネージャーの仕事に様々な歪みを生じさせてしまいます。


状況確認に時間を取られる

マネージャーは、各プロジェクトの状況を把握するために、多くの時間を費やすことになります。会議やメールでのやり取りが増え、本来注力すべき戦略的な業務に時間を割くことができなくなります。


判断が遅れる、もしくは感覚に寄る

情報が不足しているため、判断が遅れたり、感覚に頼った判断をしてしまうことがあります。これは、リスクを増大させ、機会損失につながる可能性があります。


チームにも不安と停滞感が伝播する

マネージャーの不安や停滞感は、チームにも伝播します。チームメンバーは、方向性や優先順位が不明確なため、モチベーションを維持することが難しくなります。


4. 真の「可視化」とは何か?情報を削るのではなく「軸」を揃える重要性

このように、各プロジェクトの個別の状況は把握していても、全体像がつかめないという状態が様々な問題を引き起こし、マネージャーの負担を増大させているのですが、では単に情報を一元化して把握できればいいのでしょうか?ただ情報を整理するだけでは読み込む量はそのままだし、それほど管理工数も時間も効率化できません。やはり「一目で把握できる」程度に管理する情報を減らす必要があります。

「一目で把握できる」とは、単に情報を減らすことではありません。重要なのは、情報を整理し、可視化することです。


情報を減らすこと=可視化ではない

情報を減らすことは、必ずしも可視化につながるとは限りません。重要な情報を削除してしまうと、判断に必要な材料が不足し、誤った判断をしてしまう可能性があります。


重要なのは「同じ軸で並んでいる」こと

重要なのは、複数のプロジェクトの情報を「同じ軸で並べて」比較できるようにすることです。これにより、各プロジェクトの進捗状況や課題を客観的に把握し、適切な判断を下すことができます。


ステージ・論点・進捗が揃っている意味

ステージ、論点、進捗などの情報を揃えることで、各プロジェクトの状況を比較しやすくなります。例えば、ステージが遅れているプロジェクトや、特定の論点で課題を抱えているプロジェクトを容易に特定することができます。


5. BMCとステージゲートの融合:複数プロジェクトを同一フォーマットで比較するメリット

複数の新規事業を同じフォーマットで見るという思想こそが、マネージャーの仕事を大きく効率化できます。ただし、「正しい」フォーマットという条件を満たす必要はあります。


BMCやステージゲートで揃える価値

一般的に新規事業などの場合はステージゲート管理が適切といわれています。また、ビジネスモデルキャンバス(BMC)は事業構造を全体的に把握できるメリットがあるため、ステージゲートと組み合わせることで、各プロジェクトの情報を同じフォーマットで整理することができます。これにより、プロジェクト間の比較が容易になり、全体像を把握しやすくなります。


比較できるから、判断できる

情報を比較できることで、より客観的な判断を下すことができます。例えば、リソース配分や優先順位付けなど、重要な意思決定をデータに基づいて行うことができます。


「どこで詰まっているか」が自然に浮かび上がる

同じフォーマットで情報を整理することで、「どこで詰まっているか」が自然に浮かび上がります。これにより、ボトルネックを早期に発見し、適切な対策を講じることができます。

活発な新規事業プロジェクトと不活性化したプロジェクト。把握できていますか?進捗状況の記録が重要なのです。


6. 管理から支援へ。可視化によって変わるマネージャーの「本来の役割」

では、複数の新規事業プロジェクトを一目で把握できるようになると、マネージャーの仕事はどう変わるのでしょうか?これまで時間がかかっていた状況確認や管理が減り、意思決定や伴奏支援に時間をかけることができるようになるはずです。また、個々人の経験に依存したプロジェクト推進から集団の知を活用した組織学習へと進化することができるはずです。


状況確認 → 意思決定支援へ

すべてのプロジェクトを同じKPIで可視化するため一瞬で状況確認ができるようになります。例えば、各プロジェクトの現在のステージ、そのステージに滞在している期間、BMCのセルごとの更新回数、内部メンバーとの交流回数、外部との交流回数、などの状況確認に費やす時間が減り、意思決定支援に注力できるようになります。データに基づいて、より戦略的な判断を下し、チームを成功に導くことができます。


管理 → 伴走・支援へ

状況確認に関する工数が削減されるだけでなく同一フォーマットによる精度の高い予測ができることで、リスクに対して先回りした準備ができるようになるので、リソースなどの様々な管理業務も大幅に削減できるはずです。そのため、チームメンバーへの伴走や支援といった本来の業務に時間を割けるようになります。チームメンバーの成長を促進し、より創造的なアイデアを生み出すことができます。


個人の経験 → 組織の知へ

チームメンバーの伴走や支援、チーム内のコミュニケーションの品質を充実させることで、個人の経験に頼るのではなく組織全体の知見を活用できるようになります。過去の成功事例や失敗事例を共有し、組織全体の学習能力を高めることができます。


7. 意思決定の孤独から解放される:AIとフレームワークを活用した「組織の知」

さらに、AIなどのツールを活用して一目で把握できる状態は、マネージャーが不得意な分野であってもすべての判断を一人で背負わなくてよくなるという変化ももたらします。


客観的な材料が揃っている状態

客観的な材料が揃っているため、自信を持って判断を下すことができます。また、判断の根拠を明確に説明できるため、関係者の理解と協力を得やすくなります。


AIやフレームワークを「第三の視点」として使える

AIやフレームワークを「第三の視点」として活用することで、より客観的な分析を行うことができます。これにより、バイアスや先入観にとらわれず、より適切な判断を下すことができます。


説明責任が楽になることの心理的効果

判断の根拠を明確に説明できるため、説明責任が楽になります。これにより、心理的な負担が軽減され、より積極的に意思決定を行うことができます。


まとめ:新規事業マネージャーが本来集中すべき仕事とは

新規事業を前に進めるのが「人」である以上、新規事業マネージャーが本来集中すべき仕事は「人」を支援することであって、進捗を追うことではありません。

進捗管理にかける工数や時間、心理的な負担を減らすには「見える仕組み」が大変効果的です。見える化された仕組みを構築することで、マネージャーが本来集中すべきチーム全体の能力を高め持続的な成長を可能にする業務、つまり、チームが創造性を発揮し、積極的に挑戦できるよう支援や、チームメンバーが孤独にならないように、コミュニケーションを促進し、協力体制を構築することができるはずです。