今回は、プロジェクトを公開することで事業開発スキルを可視化することの重要性と、それがイノベーターになる一番の近道である理由について解説いたします。
具体的には、プロジェクトの進捗状況の共有、提供価値の検証、多様なスキルの統合、チームコミュニケーション能力の証明といった側面から、公開プロジェクトが事業開発スキルを効果的にアピールする手段となり得ることを述べたいと思います。
事業開発スキル可視化の重要性
事業開発スキルは、企業や組織の成長を牽引する上で不可欠な能力です。しかし、そのスキルは抽象的で、目に見えにくい場合があります。そのため、ご自身のスキルを効果的にアピールし、周囲に理解していただくためには、可視化が重要となります。
リスキリング(学び直し)に関する調査において、「スキルの可視化」は、社員の学びを促し、事業上の成果に繋げるまでのステップ全体において重要な項目であるとの指摘がございます。具体的には、リスキリングの取組みが事業上の成果に繋がっている企業は、成果が出ていない企業と比較して「スキルの可視化」への取組み率が2倍以上であるという結果が示されております。
書籍、論文名: HR総研:社員のリスキリングに関するアンケート 調査報告 著者: HR総研
スキル可視化のメリット
イノベーションや新規事業開発に関しては、先が読めない中で継続的に探索することが求められる非常に難易度が高いミッションの割には、上述の通り、必要なスキルがわかりにくいといった側面があります。したがってイノベーターが持っているスキルを知ってもらうには、可能な範囲でプロジェクトを公開し、進捗状況やコミュニケーションのやり取りなどを示すことが有効な手段なのです。その結果、以下のような効果が期待できます。
- 信頼性の向上: 実績や具体的な成果を示すことで、口頭での説明よりも説得力が増し、信頼を得やすくなります。
- 機会の創出: スキルが明確になることで、企業内での昇進や異動、あるいは外部からのオファーなど、新たな機会が生まれる可能性が高まります。
- 自己認識の深化: ご自身のスキルを整理し、可視化する過程で、強みや弱みを再認識し、今後の成長戦略を立てる上で役立ちます。
- ネットワーキングの促進: 公開プロジェクトを通じて、同じ分野に関心を持つ人々とのつながりが生まれ、情報交換や協業の機会が広がります。
プロジェクトの進捗状況を公開して事業開発スキルをアピールしよう!
繰り返しになりますが、事業開発スキルを可視化することは、キャリアアップや新たな機会の獲得において非常に重要です。特に、イノベーターとして活躍するためには、ご自身のスキルを効果的にアピールし、周囲からの信頼を得る必要がございます。公開プロジェクトは、そのための有効な手段となり得ます。具体的には、プロジェクトの進捗状況の共有、提供価値の検証、多様なスキルの統合、チームコミュニケーション能力の証明といった視点があります。
1. プロジェクトの進捗状況の共有
公開プロジェクトでは、プロジェクトの進捗状況を定期的に共有することができます。これにより、多くの人に見られているという緊張感の中で、計画立案能力、実行力、問題解決能力といった事業開発に必要な基本的なスキルをアピールすることができます。
- 計画立案能力: プロジェクトの目標設定、スケジュール作成、リソース配分といった計画段階でのスキルを示すことができます。
- 実行力: 計画に基づいてプロジェクトを推進し、目標達成に向けて着実に進捗させる能力を示すことができます。
- 問題解決能力: プロジェクトの進行中に発生する課題や問題に対して、適切な解決策を見つけ出し、実行する能力を示すことができます。
進捗状況の共有は、単にプロジェクトの状況を伝えるだけでなく、これらのスキルを具体的に示す機会となります。
2. 提供価値の検証
公開プロジェクトでは、多くの関係者または関係がなくとも興味を持っているオブザーバーといった様々な属性の方々に、イノベーターがどんな価値を実現しようとしているのか、そしてプロジェクトがどのようにして価値を検証しようとしているのか、といったプロセスを見てもらうことができます。これにより、市場調査能力、顧客ニーズの把握能力、価値提案能力といった事業開発に不可欠なスキルをアピールすることができます。
顧客ニーズの理解と価値提案の重要性については、イノベーションに関する研究において長らく議論されております。特に、新規事業開発においては、顧客を深く理解し、そのインサイトに基づいた「ジョブ」を特定し、そのジョブを達成するための解決策(=提供価値)をデザインすることが成功の鍵を握ると強調されています。
書籍、論文名: The Innovator's Solution: Creating and Sustaining Successful Growth 著者: Clayton M. Christensen and Michael E. Raynor Harvard Business Review Press
- 市場調査能力: プロジェクトの対象となる市場や競合状況を分析し、機会や脅威を特定する能力を示すことができます。
- 顧客ニーズの把握能力: 顧客のニーズや課題を理解し、それらに対応するソリューションを開発する能力を示すことができます。
- 価値提案能力: プロジェクトが提供する価値を明確に定義し、顧客に魅力的に伝える能力を示すことができます。
提供価値の検証プロセスを公開することで、これらのスキルを客観的に評価していただくことができます。
3. 多様なスキルの統合
ビジネスは、単一のスキルで成り立つものではありません。事業開発には、マーケティング、財務、技術、法律など、様々な分野の知識やスキルが必要です。公開プロジェクトを通じて、これらのスキルを統合し、プロジェクトを成功に導く能力を示すことができます。
現代の複雑な事業環境下におけるイノベーション推進者には、単一分野の専門性ではなく、「T型人材」や「π型人材」に代表されるような、異なる専門知識やスキルを統合し、横断的に活用する能力が求められております。特に、事業開発においては、技術的な知見とビジネス的な洞察を結びつける能力が重要です。
書籍、論文名: The New Polymath: Profiles in Compound Knowledge 著者: Vala Afshar
- マーケティング: プロジェクトの認知度を高め、顧客を獲得するための戦略を立案し、実行する能力を示すことができます。
- 財務: プロジェクトの収益性や費用対効果を分析し、資金調達や予算管理を行う能力を示すことができます。
- 技術: プロジェクトに必要な技術的な知識やスキルを習得し、活用する能力を示すことができます。
- 法律: プロジェクトに関連する法規制や契約について理解し、遵守する能力を示すことができます。
これらのスキルを統合し、プロジェクト全体を俯瞰的に管理する能力は、事業開発において非常に重要です。
4. チームコミュニケーション能力の証明
事業開発は、多くの場合、チームで行われます。公開プロジェクトを通じて、少人数であっても、チームメンバーと円滑にコミュニケーションを取り、モチベーションを高め、プロジェクトを前進させる能力を示すことができます。
イノベーションを実現する組織に関する研究では、チーム内のオープンで効果的なコミュニケーションが、知識の共有、問題解決、アイデアの創出に不可欠であり、チームの集合的な能力と最終的な成果を決定づける要因であると強調されています。特に、遠隔地や異分野のメンバーとの協力が求められる現代のプロジェクトにおいては、この能力が一層重要となります。
書籍、論文名: Communication and the Future of Innovation (MIT Sloan Management Review) 著者: Steven S. Taylor and Steven H. Shulman
- コミュニケーション能力: チームメンバーとの意思疎通を円滑に行い、情報共有や意見交換を促進する能力を示すことができます。
- モチベーション向上: チームメンバーのモチベーションを高め、目標達成に向けて積極的に取り組む姿勢を促す能力を示すことができます。
- リーダーシップ: チームをまとめ、目標達成に向けて導くリーダーシップを発揮する能力を示すことができます。
チームコミュニケーション能力は、プロジェクトの成功に不可欠な要素であり、公開プロジェクトを通じてその能力をアピールすることができます。
まとめ
公開プロジェクトを通じて事業開発スキルを可視化することは、イノベーターへの道を開くための有効な手段です。プロジェクトの進捗状況の共有、提供価値の検証、多様なスキルの統合、チームコミュニケーション能力の証明といった側面から、公開プロジェクトはご自身のスキルを効果的にアピールし、周囲からの信頼を得るための強力なツールとなります。積極的に公開プロジェクトに取り組み、ご自身の事業開発スキルを可視化することで、新たな機会を掴み、イノベーターとして活躍することを目指しましょう。